「高血圧」の判定基準が2024年4月ついに改訂! 「副作用もある降圧剤を飲むべきか否か」問題に迫る【大櫛陽一】
「収縮期160/拡張期100」へ
三つ目は国民医療費の限界です。厚労省は2008年に医療費削減として特定健診・保健指導(メタボ健診)を開始し、職場健診や人間ドックでも同じ基準を使うように指導してきました。しかし、その後は過剰診断や薬物副作用により医療費の伸びが加速してしまいました。特に開業医の所得平均が2160万円と、他の職種での所得が増えない中で目立っています。しかし日本医師会は従業員の賃上げのために診療報酬点数を上げることを求めています。
このせめぎ合いの中で、2024年6月から再診料を2点(1点10円)、高血圧/高脂血症/糖尿病の生活習慣管理料を40点、それぞれ上げる代わりに、月2回から1回の算定とします。2022年に3回まで繰り返し使えるリフィル処方箋が制度化されており、すでに再診回数が減少しています。2024年4月からの特定健診の新しい血圧判定では140/90mmHg以上を受診勧奨判定値として残していますが、括弧付きで(判定値を超えるレベルの場合、再検査や生活習慣改善指導等を含め医療機関での管理が必要な場合がある)としています。さらに次のページで「すぐに医療機関の受診」としているのは160/100mmHg以上と明記しました。140~159/90~99mmHgは「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」と受診抑制をしています。
忙しい日本の外来診療で高血圧で受診すると、原因を調べずに「本態性高血圧」として薬が出されるでしょう。薬には効果と副作用がありますが、降圧剤では脳卒中、心筋梗塞、腎疾患など疾病への効果は認められていませんが、副作用として脳梗塞、腎機能低下、肝機能障害などが医薬品添付文書に記載されています。薬の効果と副作用のバランスを報告している利益相反のないサイト(theNNT.com)では「既往歴無し、収縮期血圧 140-159mmHg 、拡張期血圧 90-99 mmHg」の人では効果ゼロ、副作用が12人に1人としています。
高血圧と言われた人は、医師に「原因は?」と聞きましょう。毎朝と就寝前に血圧を2回ずつ測りましょう。そして、私の著書を参考にしてください。
文:大櫛陽一(東海大学名誉教授)
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